グローバルな分かち合いの経済を優先する時がきました

STWR

緊縮財政政策によって、社会福祉および不可欠なサービスへの公共支出が劇的に削減されている国々で、分かち合いの経済の基盤そのものが蝕まれていますが、政府が重要な人間のニーズのために、巨額の額の余剰資金を募り再分配することは可能です。


今日、家庭用品やピアツーピア・サービスから生活協同組合の事業や「コモンズ」に至るまですべてにおいて、社会内でのより大きな分かち合いへの必要性について多くの話しがなされています。しかし、現代世界の分かち合いの最も重要な典型のひとつを多くの場合私たちは認識できません:それは、普遍的な福祉提供のシステムです。

社会福祉制度は、異なった国々で多様な形態で存在する、基本的には複雑な「分かち合いの経済」です。分かち合いの原理は、根本的な人間のニーズおよび全国民の権利を保障する集団的責任を社会のメンバーが担うことを保証することによって、それらの制度が機能することを支えます。斬新的課税および再分配のプロセスを通して、社会全体の利益のために国家の財源(個人の収入および資産、そして企業の利益)の一部を私たちは分かち合います。

しばしば、富裕国および貧困国双方の社会福祉制度は完全から程遠く、常に効率良く施されていませんが、それは、不平等を削減し社会的団結を強化できる社会正義、結束および公平な富の分配の不可欠な表現のひとつです。社会福祉制度はまた、効果的な分かち合い経済が、より公平でより公正かつ健康的な社会の創造において果たし得る役割を、長い間認識してきた何百万人もの人々によって固く支持されています。

しかしながら、世界には分かち合い経済を確立し強化するプロセスがまだその初期段階にあるところもあります。多くの低所得国は、公共サービスの提供と、租税を通して富と収入を再分配するための効果的な制度を構築するために必要とされるリゾースを持ちません。さらに、ドナー国の出し惜しみと利己主義は – 現在のところ、「グローバルな分かち合い経済」に資金を提供するために、裕福な発展国によって使われた数少ない機構のひとつである – 既存の海外援助システムを酷く犠牲にしてきました。これらの現実は、国内および国家間の両方で分かち合いを拡大する緊急の必要性を示しています。

国家およびグローバル基盤で分かち合い経済を強化し拡大するよりむしろ、政府は何十年もの間社会福祉制度を弱体化し、貧困と不平等を激化させる政策を追求してきました。1980年以降、一握りの少数派による規制のない富の創造を支持する政府は、社会全体でより公平に成長の利益を分かち合う政策をますます縮小させてきました。今日、緊縮財政政策によって社会福祉や不可欠なサービスへの公共支出が劇的に削減されている国々で分かち合い経済の基盤そのものが蝕まれています。

グローバルな非常事態

既に非常に不平等な世界で収入と富を再分配する政策を疎かにすることは、グローバルな非常事態としか言いようのない結果をもたらしました。例えば、OECD加盟国全体で貧困の割合は10年間上昇して来ましたが、2008年の世界的な経済崩壊後急激に悪化しました。発展途上国のおおよそ半分の人々が1日2ドル以下で生き残るために苦戦する一方、さらに貧しい国々では10億人足らずの人々が公式に飢餓者として分類されています。同時に、地球温暖化によって現在3億人が被害を受けており、その結果年間30万人が生命を失っています。全体で一千5百万人が、主に栄養価の高い食糧、基本的ヘルスケアサービスまたは飲料水および衛生へのアクセスの欠如が原因で亡くなっています – それは、1日4万以上の予防可能な死にあたります。

人類に直面する多くの差し迫った問題の根底にある原因は複雑であり、それらに取り組むことは、グローバル経済を支える制度や政策の広範囲な改革を必要とするでしょう。資源の搾取、生産、分配および消費の方法から多国間企業が社会や政策立案にふるう影響に至るまで – この世界復興プロセスにおいては、社会のおおよそ全側面が再構造化されねばならないでしょう。しかし、何百万人もの人々が生命を脅かす貧困状態に直面している一方で、これらの斬新な変革が起こるのを私たちは待っていられません。今日、救命と極貧の根絶へ向かって緊急に勇気あるステップを取る必要があります – そして、政治家がなんと言おうと、それは経済的に成し得ることなのです。

シェア・ザ・ワールズ・リゾースィズ(STWR)の新報告書のリサーチに基づくと、政府には、緊縮財政政策を撤廃し、生命を脅かす貧困を防止し、そして気候変動の人間への影響を緩和するために用いることのできる十二分な資金があります。下記に要約された政策選択を活用することによって、国内および国家間双方で分かち合い経済を支えるために年間2兆8千億ドル以上を動員できるでしょう。これらの額は大まかな見積もりに過ぎませんが、それは、政府が人間の差し迫ったニーズのために莫大な付加的公共資金を募り再分配する可能性を明示しています – それは、多くの場合、存在しないか調達不可能と公衆が信じさせられてきたお金です。

  • 金融取引税:6500億ドル
  • 化石燃料およびバイオ燃料補助金撤廃:5310億ドル
  • 軍事支出の転用:4345億ドル
  • 租税回避阻止:3490億ドル
  • 国際援助強化:2975億ドル
  • アグリビジネスへの援助廃止:1870億ドル
  • IMFのリソースの再分配:1155億ドル
  • 炭素税:1080億ドル
  • 不当な債務帳消し:810億ドル
  • 関税の保護:634億ドル
    総計:2兆8169億ドル

この付加的な資金を活用するために必要とされる構造、機構および専門知識は常に整っていました。例えば、世界中で災害救助を提供し貧困関係の死を防ぐために絶えず活動する多くの国際機関があります。国際社会は既に、途上国における気候変動適応および緩和計画を促進するための多くの資金とその他の計画を確立しています。そして社会保護の点から、多くの低所得国では既に不可欠な公共サービスを国民に提供する様々な福祉制度が整っています。国連の見積もりによると、世界のGDPの僅か2%を持って全貧困者のために基本的レベルの社会保護を保証することが可能です。

分かち合いの経済的利益

既存の機関および使用可能な資金をより有効に使用することはまた、世界中で経済が縮小し失業率が上昇しているこの時、健全な経済的意味をなします。グローバルな分かち合い経済を強化することは、無数の生命を救出し、グローバル・サウスの何百万人という人々が自国の社会的、経済的、政治的および文化的生活に貢献することを可能にします。緊縮財政政策を撤廃することはまた、経済的に進んだ地域でも市民の健康、福利および可処分所得を拡大することによって著しい影響を経済におよぼすでしょう。貿易および金融関係が地球に広がるこの相互依存の世界のなかで、人間の生命へのこの大規模な投資は需要を刺激し雇用の機会を生み、そして政府の歳入を大幅に増やすことができるでしょう。

第二次世界大戦後、今日の債務を超えた債務レベルであったにもかかわらず、分かち合い経済を拡大する必要があることを理解していた多くのヨーロッパ諸国の政府は、包括的な社会福祉政策パッケージを導入しました。ルーズベルト大統領は、1933年から1936年までの米国の最も酷い経済恐慌の間、経済計画・ニューディール政策の一部として同じような方針を導入しました。1948年、米国は、戦争によって荒廃させられたヨーロッパ諸国の再建と経済の回復を援助するために計画されたマーシャル・プランの一部として、それらの国々への大規模な財源移動を開始しました。国内および国外のより幅広いコミュニティに利益をもたらすように財源を分かち合うための、これらの画期的な方針をさらに蝕むのではなく、今こそ、私たちが社会の全レベルで分かち合い経済を拡大する時なのです。

上記に浮き彫りにされた方策を実施することは、人類に大きな利益をもたらし国際社会にとって素晴らしい飛躍を記すことが可能であり、その後緊急に続かねばならないさらに堅固な改革への道を開きます。これらの政策措置の多くはまた、より少ない軍事支出、より少ない国家債務、より少ない企業助成政策、より少ない不平等ならびにより公平な国際貿易体制、よりグリーンな世界経済の確立を促進することによって、それだけでも非常に有益です。これらの幅広く支持された長期的目標を達成することは、全世界にとって正しい方向への巨大な一歩であり、斬新的変革に向かって取り組む何百万人もの人々にとって勝利の前触れとなるのです。

プログレスへの障害を乗り越えて

従ってもし私たちがお金、そしてグローバルな人道的非常事態の最悪な影響を緩和するために(そうすることは健全な経済的意味をなします)必要とされる機関や技術的知識を持っているなら、なぜ私たちは国家および国際レベル双方で分かち合い経済を疎かにし弱体化し続けるのでしょうか。

この疑問が政策立案者に問われることは滅多にありませんし、そして世界的な非常事態の範囲についての、そしてもしそれを優先しさえするならどれだけ簡単に万人の基本的ニーズが確保され得るかについての公衆の討論があからさまに欠落しています。これらの問題について急き立てられる時、選出された役人たちは、国民を保護するための政府のお金は底を尽きたのだとしばしば主張するだけです。まして海外の人々を助けるなんてとんでもありません。このやる気のなさと政治的怠慢には、政策立案者、経済学者およびビジネスリーダーたちの間での世界問題の取り組みにおける、完全に市場基盤のアプローチの優勢性など多くの複雑な原因があります。本当に長い間、政府は民間部門および自由市場に過度に重点を置いた経済モデルを追求してきており、従って、万人と環境の福利より利益と成長を優先することによって分かち合い経済を弱体化しているのです。

この政治的現実を考慮すると、租税回避地の閉鎖、非常識な補助金の転用、あるいは軍事支出の削減などの控えめな提案を実施することでさえが、大規模な公衆の支持を必要とするでしょう。より良い世界のための希望は、国境を越えた変革を要求することに参加する世界の公衆にかかっています。2011年のピープル・パワーの幅広い動員が証明したように、唯一結束した人々の声だけが斬新的な変革を妨げる私益に打ち勝てるのです。分かち合い経済の全形態を支持し強化する世界規模の大衆運動をもたらす変革の義務は、私たち – 従事する一般市民 – にあるのです。

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