より大きな経済的分かち合いへの呼びかけは、長い間気候変動と持続可能な発展の国際討論の中心となってきました。

問題の核心は、世界の限りある資源が公平に、そして生物圏の再生力と吸収力を超過しない割合で消費されることをどのように保証するかということです。限りある世界のエコロジカル・フットプリントや「正当な分け前」の観点から話し合うかどうかは別として、取り返しのつかない程この惑星を破壊して未来世代から資源へのアクセスを剥奪することなしに、万人が地球資源を分かち合う平等な権利をもつべきなのです。
今日にいたるまで二酸化炭素排出を規制し、すべての国の間で大気の残った「カーボン・スペース」を公平に分かち合うための政策の骨組みについて政府は合意にいたらずにきました。しかし天候異変と環境汚染は、自然界の私たちの過剰搾取と劣化の結果として起こったより広い生態学的危機の一面にすぎません。この惑星の生態系のおよそ60%が、私たちが知るところの人間の健康、幸福、文明を脅かす、世界中の生物多様性の急速な損失を痛切に示しています。
現在、人類は惑星地球が補充できるよりさらに50%速いペースで天然資源を消費しており、その結果、今日の消費レベルへ対応するためにはこの惑星一個半分が必要とされます。それにもかかわらず、特に食料、石油、土地、水などをはじめとする全種類の資源への要求は急激に増加しています。すなわち、資源の欠乏と環境制約の問題は近年グローバルな議題の中で強まっており、新興国経済における人口増加と富の上昇の理由により、かつてない程さらに差し迫ったものとなっています。
正当な取り分
しかしながら地球資源を分かち合うことの課題は、世界全体の消費パターンの膨大な不均衡に根本的に関係しています。現在、世界人口の最も裕福な20%が – その大部分が富裕国に住んでいるのですが – 世界資源の80%を消費しているため、気候変動と環境破壊の大部分に対して責任があります。その一方で、人口の最も貧しい20%は食料、きれいな水、エネルギーへの十分なアクセスを欠いており、世界資源の消費の1.3%を占めるに過ぎません。拡大する不平等の一層の原因となり、しばしば貧困と社会的対立を増す気候変動と資源の枯渇の有害な影響のために極度に苦しんでいるのも貧困者です。
これは地球の境界線と持続可能性の制約についての議論の中で公正さと公平さについての重大な問題点へと導きます。もし、世界の限りある資源が万人にアクセス可能となるなら、貧しい国々が経済を成長させ物質的生活基準を改善できるよう、高所得国は明らかに天然資源の使用を大幅に削減せねばならないでしょう。同時に貧困国は国際的な環境目標にしたがい、今日の発展国より非物質的なモデルの発展へ目標を定めねばならないでしょう。
繁栄と大規模な経済の再組織化の概念を思い描き直すことを最終的に必要とするであろう、公平さに基づいた持続可能な発展を達成するために必要とされる前述の基本的調整を避けて通る術はありません。天然資源を消耗させ生物多様性をむしばみ大気を汚染する生産と消費のパターンを変えない限り、そして私たちが商業的利益でなく母なる地球の権利を優先しない限り、維持可能で公正な社会の創造を達成することは不可能であり続けるでしょう。現在の政治的、経済的環境のなかでのそのような改変は達成不可能なように見えるかもしれませんが、地球の生命維持装置の取り返しのつかない破壊への確実性が、たった一つの選択しか国際社会に対して残さないのです。それは、政策立案と世界統治の最前線に経済の分かち合いと環境管理を置くことです。
上記は「グローバルな経済の分かち合い入門」からの抜粋です。
フォト・クレジット: Fai H., フリッカー・クリエィティブ・コモンズ