
今週、ニューヨークでは「国連国際租税協力枠組条約(UN Framework Convention on International Tax Cooperation)」をめぐる第5回交渉が行われています。こうした交渉は、多くの人にとって退屈で、興味のないものに思えるかもしれません。しかし、今後協議締結に向けて会議室で交わされる議論は、私たちの生活や健康、そして生活費に直結するものです。そこで下される決定は単純なものですが、私たちの暮らしに重大な影響を及ぼします。それは、経済危機や気候危機から利益を得ている汚染者たち(その代償を支払わされているのは私たち一般市民です)に、彼らが負うべき負担をさせるのかどうか、という問題なのです。(350.orgのマリカ・シンガル著)
私たちがすでに支払っている代償
紛争、石油ショック、高騰する支払額
世界の海上石油貿易の約5分の1に加え、大量のガスや肥料が通過するホムルズ海峡周辺で米国、イスラエル、イランの対立が激化して以来、海運の混乱により、今年に入って断続的に1日あたり数百万バレルの石油が世界市場から失われました。その結果、原油価格は急騰し、一時1バレルあたり100ドルを大きく上回る水準で取引される事態となりました。
このコスト増の影響は、海運ルートにとどまりません。石油、ガス、肥料の価格高騰は、あらゆる場所のあらゆる人々にとって、輸送費、食料品価格、電気料金の上昇を招いています。米国だけでも、紛争開始以来、消費者はガソリンの支払いで既に670億ドル近くを余分に負担しており、これは1世帯あたり500ドルを超える燃料費の増加に相当します。実際、こうした価格高騰により、2026年末までに7000億ドル以上もの資金が、家計や企業から石油・ガス業界へと流出すると試算されています。
異常気象
もう一つの衝撃も進行しています。化石燃料企業が助長する気候危機は、異常気象の頻度と激しさを増大させ、人命と公的予算の双方に甚大な被害をもたらし続けています。この夏、欧州では観測史上最悪のペースで山火事シーズンが始まり、7月下旬までに焼失面積は43万4000ヘクタールに達しました。これは、それまで史上最悪の年だった2025年の同時期を上回る規模です。フランスでは現在、過去半世紀で最も破壊的な山火事が発生し、フランスとスペインを合わせて30万人以上が避難を余儀なくされています。またスペインは、近代史上最大規模の山火事と闘っており、消火活動の費用だけでも最大33億ユーロに上ると推定されています。アルジェリア、トルコ、カナダといった国々でも、死者を出すような山火事への対応が続いています。さらに世界各地で、洪水、干ばつ、熱波といった気候変動による壊滅的な被害が拡大し、数百万人の生活が根底から覆されています。各国政府は毎年、消火活動、避難、緊急支援、復興など、事態の収拾や対応のために、ますます多くの税金を費やしています。
化石燃料価格の急騰や気候災害は、私たちにとって「非公式な第二の税金」のような役割を果たしています。つまり、私たちは日々の支払いを通じて一度、そして納める税金を通じて再び、そのコストを負担させられているのです。
私たちのお金は、実際どこに行くのか
私たちの懐から出ていったお金が、単に消えてなくなるわけではありません。一般の人々が苦境にあえぐ一方で、石油・ガス大手は記録的な利益を上げています。それも、こうした価格の急激な変動(プライス・ショック)があったからこそ、なのです。米国・イスラエル・イラン間の対立が引き起こした市場の乱高下は、彼らにとって極めて「好都合」な状況をもたらしました。実際、大手各社は2026年第2四半期(4月・5月・6月)において、驚くべき高収益を記録したと発表したところです。
- フランスの石油・ガス大手であり、売上高で同国最大の企業であるトタルエナジーズは、60億ドルの利益を計上しました。これは前年の2倍以上に相当します。
- 英国の石油・ガス大手であり、世界有数のエネルギー企業であるシェルは、第2四半期の利益として98億4000万ドルを計上しました。これは前年同期比で2倍以上となるだけでなく、2022年以来最高の四半期業績でもあります。同社のワエル・サワンCEOは投資家に対し、同社は「市場の変動局面で成長し続けられる」体制を築いていると語りました。同じく英国の石油大手であるBPも、57億3000万ドルを超える純利益を発表しており、これは前四半期から25億ドル増加した数字です。
- 米石油大手のエクソンとシェブロンは合計で260億ドルを超える利益を計上し、特にシェブロンにとっては四半期ベースで過去最高の利益となりました。
世界が気候やエネルギーをめぐる混乱への対応に追われる中、わずか4社の石油大手だけで480億ドルを超える利益を上げているのです。これを別の視点から見れば、その額は100カ国以上の国々の年間国民所得の合計を上回る規模に相当します。
国連租税条約は、軌道修正を図るための好機
この状況には、極めて不公平な側面があります。家計を圧迫し、公的財政を逼迫させているまさにその価格変動によって、化石燃料企業は巨額の利益を上げているのです。今回の交渉は、家計にかかる負担を軽減し、莫大な利益を上げている企業にそのコストを転嫁するような拘束力のあるルールを策定することで、この状況を変える絶好の機会となります。各国政府は、企業による租税の回避や不透明さをなくし、より公平な課税ルールを確立するため、2027年までに「国連国際租税協力枠組条約」の締結を目指しています。しかし、この条約はそれだけでなく、気候危機の一因となった石油・ガス大手企業に対し、被害を受けた国の人々への長期的な支援策の資金を負担させるためにも活用されなければなりません。
これは、特にグローバル・サウスの国々にとって極めて重要です。これらの国々は、化石燃料の埋蔵地であったり、気候変動による被害を最も深刻な形で受けていたりする一方で、そこから生み出される利益の公正な取り分を主張する力が最も弱い立場に置かれているからです。また、化石燃料企業への支援や、同産業が引き起こした気候災害への対応のために、公的予算がますます食いつぶされている他の国々にとっても重要です。石油大手企業が税金として支払わなかった1ドルごとに、私たち納税者の1ドルを使って政府が負担せざるを得ないことを意味します。その資金はどこかから捻出されなければならず、通常は医療、教育、交通、その他の公共サービスのための予算から削り取られることになるのです。
議題になるべきこと
新たな国際条約の策定が進む今こそ、私たちが望む未来への資金を確保する好機です。各国の政府は、気候変動による被害の責任を、最も深刻な汚染を引き起こしている最も富裕な企業に確実に負わせる必要があります。そのためには、以下の2点を確保しなければなりません。
1. 化石燃料企業が現在得ている利益に対する、強力かつ恒久的な課税
調査によると、世界の石油・ガス大手100社の利益に20%の付加税を課していれば、2015年のパリ協定締結以来、1兆800億ドル以上の資金を調達できていました。各国の指導者は、「汚染者に支払わせる原則」に基づき、化石燃料企業の世界的利益に対する恒久的な付加税を国連の租税条約に盛り込むべきです。そうすることで、気候危機によって巨額の利益を上げている企業に対し、今年の価格高騰が忘れ去られた後も、その責任に見合う負担を負わせることができます。
2. 歳入を気候変動対策に充てること
この条約では、調達された資金を、気候災害、エネルギー貧困、化石燃料価格の急騰による打撃を最も強く受けている地域や国々、そして再生可能エネルギーへの迅速かつ公正な移行のために充てることを確約すべきです。こうした使途の特定がなければ、政府が汚染者に課税したとしても、汚染の代償を最も重く負わされている人々への具体的な支援が行われないままになる恐れがあります。
化石燃料による莫大な利益がほとんど手つかずのまま残されているにもかかわらず、クリーンエネルギーへの移行やその他の重要な公的優先事項のための資金が不足していると主張し続けることは、指導者として許されません。自らのビジネスモデルが気候危機を招いていると何十年も前から知りながら、採掘や事業拡大を続け、記録的な利益を上げ続けてきた業界の「臨時利潤」に対して課税を行う必要があります。つまり、石油大手(ビッグ・オイル)の棚ぼた的利益に課税し、課税前に利益が消えてしまうような抜け穴を塞ぎ、その収益を最も必要とされている場所――すなわち、同業界が引き起こした危機の代償を払わされている人々や国々――に届けることが求められているのです。
私たちにできること
交渉の場に直接席を連ねていなくても、そこで決まることの当事者であり続けることは可能です。石油・ガス企業があらゆる混乱に乗じて利益を上げ続け、そのコストを一般家庭が負担させられているのは、そうした行為を可能にするルールが存在するからです。しかし、ルールは変えることができます。
今週の会議は、決して逃してはならない機会です。石油大手各社の第2四半期決算によって、具体的な数字が明らかになりました。政府が本来徴収できたはずの税収と、実際に企業が得ている利益を比較検討できるのです。まさに今、条約の条文にその徴収の仕組みを盛り込むかどうかが議論されようとしています。
これこそが、私たちが持つ「交渉力」です。私たちは、国連租税条約の交渉に参加するすべての政府に対し、化石燃料企業の世界的な利益に対して恒久的かつ回避不可能な付加税を課す規定を条約に盛り込むよう求めます。そして、その税収を気候変動対策や、最も必要としている人々への気候保護と安価でクリーンなエネルギーの提供に充てるよう訴えます。
汚染者に代償を支払わせましょう!
マリカ・シンガルは、350.orgのグローバル・コミュニケーション担当シニア・コーディネーターです。
Original source: 350.org
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