国連はまさに絶望の淵に立たされているのか?

7th 8月 2026

世界の指導者たちの非合理性、知識の欠如、そして近視眼的な視野は、世界の人々が国連に託した希望を打ち砕いてしまうのでしょうか?コニー・ペック博士がCommon Dreamsに寄稿しています。

現在、私たちは、史上類を見ない破壊力を秘めた核兵器や通常兵器が至る所に配備された世界に生きています。例えば核戦争が起きれば、その大半はわずか1時間で決着がつくとされ、その1秒1秒が第2次世界大戦全体に匹敵する破壊をもたらすことになります

その一方で、世界的な軍事費の急増が私たちの安全を脅かすと同時に、加盟国による資金供給の不足(兵糧攻め)によって、平和を維持するための国連の能力が損なわれています。


国連と、より良い世界のための処方箋

二度の世界大戦を経て、人類は教訓を学び、それぞれが「すべての戦争を終わらせるための戦争」となるだろうという大きな期待が抱かれました。実際、国連はそのまさにその目的のために創設されたのです。国連憲章の「前文」にはこう記されています。「我ら連合国の人民は、我らの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨禍から将来の世代を救い……」。しかし、希望だけでは不十分でした。

暴力的な紛争を防ぐための憲章の処方箋は、確固たるものでした。加盟国は、加盟の義務として、紛争を平和的に解決し、互いに対して武力による威嚇や武力の行使を控えることに合意したのです。

その処方箋は、単なる紛争の平和的解決にとどまらず、紛争の根本原因に対処し、持続可能な平和のための条件を創り出すことにも及んでいました。そこでは、「基本的人権、人間の尊厳及び価値、男女の同権並びに大小各国の同権に対する信念を再確認し、正義及び条約その他の国際法の法源から生ずる義務の尊重を維持し得る条件を確立し、かつ、より大きな自由の中で社会的進歩とより良い生活水準を促進する」ことが誓約されたのです。

しかし、この希望に満ちた青写真が実際に動き出す前に、世界の平和と安全に対する新たな脅威が出現しました

サンフランシスコで国連憲章の交渉と署名が行われていたまさにその頃、1000マイル(約1600キロ)離れたニューメキシコ州ロスアラモスでは、原子爆弾の開発が進められていました……。憲章への署名からわずか41日後の1945年8月6日、広島の上空で最初の原子爆弾が炸裂しました。1945年10月24日に国際連合が設立された時点では、同機関がその役割を果たすべき世界は、根本的に変容してしまっていたのです。

実際、その後の45年間、核の脅威と冷戦は国連に暗い影を落とし、世界の人々が国連に寄せた期待を大きく歪めてしまいました。

冷戦が突然終結した際、その負の遺産である弊害や放置されてきた問題は、容易に解消されるものではありませんでした。一方の超大国は軍事的優位を求めて突き進む中で財政破綻を招き、もう一方の超大国もまた、巨額の費用を投じて高価な核兵器の開発に明け暮れていました。

その一方で、世界人口の大部分が極度の貧困に喘ぎ、栄養失調や健康問題、教育不足に苦しんでいました。低開発や経済停滞、そして高まる人々の期待が、抗議活動や暴力、さらには国内紛争の温床となるなると同時に、人口問題や環境問題が放置されたことは、多岐にわたる安全保障上の脅威を招きました。さらに、地球温暖化、森林伐採、砂漠化、大気・土壌・水質の汚染、そして生物多様性の喪失といった新たな脅威が、地球そのものの健全性を脅かす事態ともなりました。

冷戦後の力の空白の中で、国連はもはや脇役に甘んじることなく、むしろ主役としての役割を果たすことを求められるようになりました。短期間のうちに、この組織に寄せられる期待や要求、そして負うべき責任は劇的に増大しました。平和維持活動(PKO)の予算がニューヨーク市警察と消防局の予算と変わらない程度だった組織が、世界の警察と消防の役割を担うことを求められたのです。それと同時に、国連にそうした拡大された役割を激しく求めていた国々の中には、分担金の支払いを遅らせたり、支払いを全面的に拒否したりする動きも見られました。

今日の国連は、極めて複雑かつ多岐にわたる問題に効果的に対処すべきだという並外れた期待と、嘆かわしいほど不十分なリソースでどうにかそれを成し遂げなければならないという現実との間で、苦境に立たされています。

それでもなお、国連はその81年の歴史の中で多くの成果を上げてきました。その一例として、国連の様々な機関や関係者にノーベル平和賞が12 回授与されたことが挙げられます。本稿でその活動のすべてを詳述することはできませんが、いくつかの成果に触れることで、その背景を理解する一助となるでしょう。

国連が設立された当時、世界の人口の3分の1近く(7億5000万人)が植民地支配の下にありました。国連による脱植民地化の取り組みの結果、現在彼らは80の独立国の市民となっており、国連の加盟国数も51カ国から193カ国へと増加しました。

国連は二つのレベルで活動しています。政府間レベルでは、加盟国が国際的な問題について議論し、可能な場合には行動を起こすための場(国連総会およびその委員会、経済社会理事会、安全保障理事会などを通じて)を提供しています。利害が必ずしも一致しない「ウェストファリア体制」下の国家が支配する世界において、多国間での意思決定は必然的に遅々として進まず、煩雑なものとなります。しかし、合意が極めて大きな影響をもたらした事例も数多く存在します。その一例が「世界人権宣言」および関連する人権規約であり、さらにその実施を監視・支援する仕組みの構築を含め、その後制定された数多くの人権関連文書も挙げられます。

もう一つの例として、「2015年の持続可能な開発目標(SDGs)とそのターゲットが挙げられます。これには、「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」「安全な水とトイレを世界中に」「気候変動に具体的な対策を」「平和と公正をすべての人に」といった目標や、その他9つの目標が含まれています。

国連が主催する特定のテーマに関係する国際会議も、政府間対話の機会を提供しています。こうした会議は、気候変動、HIV/AIDS、人口と開発、女性とジェンダー平等、人種差別といった問題に対し、建設的な成果をもたらす可能性があります。

これと並行して、国連事務総長、事務局および各部局、さらには国連の基金・計画・専門機関(世界食糧計画[WFP]、国連難民高等弁務官事務所[UNHCR]、国連児童基金[UNICEF]、世界保健機関[WHO]など多数)が、それぞれの任務を遂行し、総会や安全保障理事会の決議を世界各地で実施しています。

国連の活動全体を通じて、予防外交、平和創出、平和維持、紛争後の平和構築、そして平和執行といった取り組みが行われ、多くの危機や紛争が未然に防がれたり、解決されたりしてきました。地域レベルでの国連の軍縮の取り組みは紛争の再発防止に寄与し、国際的な取り組みは核不拡散や、生物・化学兵器の禁止および監視に貢献してきました。人道支援活動は、飢饉、難民の大量流出、感染症の世界的流行(パンデミック)を防いだり、その被害を抑え込んだりしてきました。天然痘は根絶され、ポリオの根絶も目前に迫っています。極度の貧困状態で暮らす人々の数は半減し、就学の機会は飛躍的に拡大し、妊産婦死亡率も大幅に低下しました。国連はまた、ジェンダー平等の推進においても重要な役割を果たしてきました。

国際司法裁判所(国連の機関の一つ)は、数多くの案件において法的拘束力のある判決を下すことで、国際法の形成と強化に貢献してきました。国連の仲介で締結された条約は新たな国際法を確立しており、その例として、海洋活動に関する法的枠組みを定める「国連海洋法条約」などが挙げられます。

国連はまた、あまり広く知られていない分野でも多くの取り組みを行っています。具体的には、農業生産性の向上、国際航空航行の原則や技術の法典化、労働問題への対応、国際電気通信の標準化・規制、知的財産権の保護、移住に関する支援、原子力の平和利用の促進と軍事利用の阻止、化学兵器禁止条約の遵守状況の検証などが含まれます。

しかし、アントニオ・グテーレス事務総長が主張するように、国連の最も重要な功績は次のような点にあります。「80年という歳月を経てなお、国連の創設と第三次世界大戦の回避との間には、直接的なつながりを見出すことができる」ということです。

その一方で、世界の軍事費は増加の一途をたどっており、紛争もまた増え続けている

しかし、軍拡競争が戦争の可能性を高めることを示す研究や、軍事費の増大が紛争の減少につながらないことを示す証拠(組織的暴力に関する世界有数の情報源による最新データがこれを裏付けています)が存在するにもかかわらず、冷戦終結後も、各国は依然として「抑止力」という欠陥のある政策を追求し、軍事力と安全保障を同義と見なしています。

2025年には、暴力的な紛争の数が65に増加し、1946年のデータ収集開始以来最多となりました。紛争の多くは国内紛争でしたが、国家間紛争も急増しています。「2000年代の10年間で国家間紛争は8件、2010年代には12件発生したが、2020年代に入ってからはすでに22件に上っている」

死者数も2025に急増し、1994年のルワンダ虐殺以来、2番目に多い水準に達しました。ロシアとウクライナの戦争は、3年連続で世界で最も多くの死者を出した紛争となりました。

世界の軍事費も2025年に11年連続で増加し、驚くべきことに2兆9000億ドルに達しました。もし同様の増加傾向が続き、NATO諸国が公約通り軍事費をGDP比5%にまで拡大すれば、世界の軍事費は2035までに6兆6000億ドルに達する可能性があります。これは冷戦終結時の5倍に相当する規模です。

現在の米国の軍事予算は1兆ドルという驚異的な額ですが、トランプ政権は2027年に向けて、これを1兆5000億ドルへと大幅に増額するよう求めています。したがって、予測通り世界の軍事費が増加すれば、米国の1兆5000億ドル(承認された場合)は、全世界の軍事費のほぼ半分を占めることになります。

米国政府は、中国やロシアからの安全保障上の脅威を巨額の軍事予算の主な理由として挙げていますが、2025年のロシアの軍事支出は1900億ドルであり、米国の5分の1未満にとどまっています。世界第2位の軍事支出国である中国の支出額は3360億ドルで、米国の軍事予算の約3分の1に相当します。

国連事務総長が結論づけているように、「軍事支出が増加しているにもかかわらず、世界の安全保障状況は悪化の一途をたどっており、安全保障強化のために軍事費を増やすことの有効性が疑問視されている」

私たちは本当に、さらなる兵器や戦争を望んでいるのでしょうか、あるいはそれらを必要としているのでしょうか?むしろ、国連が掲げるような「協調的安全保障」「集団的安全保障」「人間の安全保障」の道を選ぶべきではないでしょうか。

残念ながら、私たちはそうしてきませんでした。2025年度の未払い分があったため、グテーレス事務総長は2026年1月、加盟国に対し、期限内に分担きんが支払われなければ「差し迫った財政破綻」を招くと警告する書簡を送りました。通常予算への分担金納付期限である2月8日の時点で、支払いを済ませたのはわずか55カ国にとどまり、現在に至るまで、国連への最大拠出国である米国も中国も、分担金の全額を支払っていません。7月には、国連の予算責任者が次のように報告しました。「8月以降を乗り切るための十分な資金が不足している。主要な拠出国が支援に乗り出さない限り、国連は(今年9月22日~28日に開催される)国連総会のハイレベル・ウィークの費用を捻出するために、他の支払いを遅らせざるを得なくなるだう」。昨年の財政不足に対処するため、2026年の国連通常予算は15%削減され34億5000万ドルとなりましたが、これは世界の軍事支出が国連通常予算の840倍に上ることを意味しています。

国際秩序の行方に関する最近の分析において、ブルッキングス研究所の専門家たちは次のように結論づけています。「トランプ政権が多国間秩序の残存部分を打ち砕くほどに強硬な動きに出るかどうかは未知数だが、それに取って代わるものとして、制約のない米国の力以外に何があるのか​​を示す証拠は存在しない」

しかし、『A New Agenda for Peace(新たな平和への課題) が指摘するように、「戦争は常に選択の結果である……戦争が選択であるならば、平和もまた選択し得るものだ。今こそ、平和への決意を新たにする時だ」。また、未来のニーズに応えるために国連を再生・改革することに尽力すべき時でもあります。国連事務総長が述べているように、「世界的な優先事項のバランスを再調整すること……それは人類が生き残るために不可欠なことである」

もちろん、これには市民や市民社会(つまり私たち自身)による、十分な知識に基づいた関与も不可欠です。私たちは、政府に託した公的資金が、真の安全をもたらす形で使われるよう監視しなければなりません。世界の誤った指導者たちに国連を破滅の淵へ追い落とさせるわけにはいきませんし、同時に、私たち自身が気づかぬうちに破滅的な事態(ハルマゲドン)へと突き進んでしまうような事態も防がねばならないのです。


コニー・ペック博士は、国連の幹部職員や外交官を対象とした交渉・調停に関する初の研修プログラムである「国連訓練調査研究所(UNITAR)平和構築・紛争予防プログラム」の創設者です(同プログラムは現在33年目を迎えています)。彼女は、紛争解決や核の脅威に関する数多くの著書、論文、および書籍の章を執筆しています。

Original source: Common Dreams

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